楷書五言対聯

かいしょごごんついれん
     

今回は福を引き寄せる作品を紹介します。
清末民国初期に上海で活躍した曾熙(そうき・ 1861~1930)の対聯です。本作の「丹禽(たんきん)」とは「赤い鳥」もしくは伝説の瑞鳥である「鳳凰(ほうおう)」をさします。「朱華」は「赤い花」もしくは吉祥花である「蓮(はす)」。赤はめでたさの象徴であり、「歳辰」は時間の意味です。「鳳凰は大空を天翔け 朱い蓮は正しく時を知らせる」という、お正月に掛けられるようなおめでたい文句です。
さて、今回はこのめでたい書を書くのに相応しい金銀泥で細密に描かれた雲龍紋が見事な、最上級の蠟箋(ろうせん)が主人公です。下地は絹織物です。日本でも絹本(けんぽん)と呼び、平安時代のころから絵画や書の素材として利用されています。表面が滑らかで墨がよく伸び、見た目にも光沢があり透明感もありながら厚みがあるので紙よりも高級感が出ます。この作品の場合は真っ赤に彩色していますから透明感はありません。ですが赤は絹本ならではの深みです。さらにその上に純金と純銀を細かくすりつぶした絵具(金泥、銀泥)を使って瑞雲を翔け巡る龍の姿を描いています。大きく見開いた眼と口はユーモアと威厳があり、5本の指は嘗て皇帝の象徴でした。全身を覆う鱗(うろこ)の1枚の大きさは約1㎜。よく観ると龍の手足や顔と瑞雲には金泥でぼかしが施されています。勿論これらは版画や印刷ではなく、専門の蠟箋職人がすべて手彩色で1枚1枚描いています。ご覧いただくと、金泥のぼかし技法がよく分かります。
このような蠟箋そのものが工芸品といってよいでしょう。また書かれた言葉や文字は、無地の紙に書かれた場合とは全く違った、空間(気)を生じさせます。勿論、書き手の緊張感や達成感も異なることでしょう。
そういったダイナミックさを演出することも文房具の役割といえます。(教師月報 2020年1月号)

 

                                               
作品名楷書五言対聯
ふりがなかいしょごごんついれん
作者曾熙
国名中国
制作年清時代後期
寸法各154.5×37.0cm
目録番号4A-1122
釈文玉生仁兄法家雅鑑 丹禽翔天表 朱華紀歳辰 農髯曾煕

今回は福を引き寄せる作品を紹介します。
清末民国初期に上海で活躍した曾熙(そうき・ 1861~1930)の対聯です。本作の「丹禽(たんきん)」とは「赤い鳥」もしくは伝説の瑞鳥である「鳳凰(ほうおう)」をさします。「朱華」は「赤い花」もしくは吉祥花である「蓮(はす)」。赤はめでたさの象徴であり、「歳辰」は時間の意味です。「鳳凰は大空を天翔け 朱い蓮は正しく時を知らせる」という、お正月に掛けられるようなおめでたい文句です。
さて、今回はこのめでたい書を書くのに相応しい金銀泥で細密に描かれた雲龍紋が見事な、最上級の蠟箋(ろうせん)が主人公です。下地は絹織物です。日本でも絹本(けんぽん)と呼び、平安時代のころから絵画や書の素材として利用されています。表面が滑らかで墨がよく伸び、見た目にも光沢があり透明感もありながら厚みがあるので紙よりも高級感が出ます。この作品の場合は真っ赤に彩色していますから透明感はありません。ですが赤は絹本ならではの深みです。さらにその上に純金と純銀を細かくすりつぶした絵具(金泥、銀泥)を使って瑞雲を翔け巡る龍の姿を描いています。大きく見開いた眼と口はユーモアと威厳があり、5本の指は嘗て皇帝の象徴でした。全身を覆う鱗(うろこ)の1枚の大きさは約1㎜。よく観ると龍の手足や顔と瑞雲には金泥でぼかしが施されています。勿論これらは版画や印刷ではなく、専門の蠟箋職人がすべて手彩色で1枚1枚描いています。ご覧いただくと、金泥のぼかし技法がよく分かります。
このような蠟箋そのものが工芸品といってよいでしょう。また書かれた言葉や文字は、無地の紙に書かれた場合とは全く違った、空間(気)を生じさせます。勿論、書き手の緊張感や達成感も異なることでしょう。
そういったダイナミックさを演出することも文房具の役割といえます。(教師月報 2020年1月号)

 

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