松猿図

しょうえんず
     

本年の干支である猿は、中国の絵画作品によく見られる画題です。中国では、「猴」もしくは「猿猴」と書くことが多く、公・侯・伯・子・男の爵位五等級の中で、「侯」と「猴」とが同じ発音であるため、出世を象徴する動物として知られています。
また、猿が馬上に描かれることを「馬上封侯【ばじょうふうこう】」といい、「馬上」とは「すぐに、まもなく」という意味があります。従って、猿と馬との組み合わせは、すぐに侯に封ぜられ、出世することを意味します。他に、蜂と組み合わせたものもあり、こちらは、「猴(侯)」に「蜂(封)」ぜられる、という意味になります。
松はご存知の通り、常緑樹で季節に影響されず育つため、長寿を象徴する植物として知られています。通常、松は鶴との組み合わせで描かれることが多いのですが、本作では、その松に二匹の猿が摑まり、その眼や仕草から、「出世」と「長寿」とを強く願う気持ちが表されているといえるでしょう。
程璋(1869~1938)は、字は瑶笙【ようしょう】といい、安徽省休寧の人です。絵画は様々な画題を得意としましたが、中でも、花鳥画、動物画の名手として知られました。西洋画の透視法、明暗法を取り入れて、独自の画風を開き、上海で人気のあった画家の一人です。確かに、猿の表情の描き方はとても写実的で、毛並み一本一本を丁寧に描いています。款記に「元人の法に擬す」とありますが、程璋独自の描き方によるものと思われます。
ちなみに、猿が二匹描かれているので、「両猿(良縁)」という語呂合わせを思い付かれた方がいらっしゃるかもしれません。いずれにしても、吉祥画であることには変わりありませんね。(かな部 資料紹介 2016年12月号)

                                               
作品名松猿図
ふりがなしょうえんず
作者程璋
国名中国
制作年民国8年(1919)
寸法103.3×47.9cm
目録番号4b-0499
釈文擬元人法 己未冬日 新安瑶笙程璋

本年の干支である猿は、中国の絵画作品によく見られる画題です。中国では、「猴」もしくは「猿猴」と書くことが多く、公・侯・伯・子・男の爵位五等級の中で、「侯」と「猴」とが同じ発音であるため、出世を象徴する動物として知られています。
また、猿が馬上に描かれることを「馬上封侯【ばじょうふうこう】」といい、「馬上」とは「すぐに、まもなく」という意味があります。従って、猿と馬との組み合わせは、すぐに侯に封ぜられ、出世することを意味します。他に、蜂と組み合わせたものもあり、こちらは、「猴(侯)」に「蜂(封)」ぜられる、という意味になります。
松はご存知の通り、常緑樹で季節に影響されず育つため、長寿を象徴する植物として知られています。通常、松は鶴との組み合わせで描かれることが多いのですが、本作では、その松に二匹の猿が摑まり、その眼や仕草から、「出世」と「長寿」とを強く願う気持ちが表されているといえるでしょう。
程璋(1869~1938)は、字は瑶笙【ようしょう】といい、安徽省休寧の人です。絵画は様々な画題を得意としましたが、中でも、花鳥画、動物画の名手として知られました。西洋画の透視法、明暗法を取り入れて、独自の画風を開き、上海で人気のあった画家の一人です。確かに、猿の表情の描き方はとても写実的で、毛並み一本一本を丁寧に描いています。款記に「元人の法に擬す」とありますが、程璋独自の描き方によるものと思われます。
ちなみに、猿が二匹描かれているので、「両猿(良縁)」という語呂合わせを思い付かれた方がいらっしゃるかもしれません。いずれにしても、吉祥画であることには変わりありませんね。(かな部 資料紹介 2016年12月号)

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