清貢墨

しんこうぼく
     

古玩文具の魅力②清貢墨
―観峰館の収蔵品をご紹介します―
今回は中国の古い墨「清貢墨(しんこうぼく)」をご紹介します。墨は比較的保存がきくため、長く保管されたものは古墨として評価されます。
紹介の墨は、全体にひび割れが入っていることから、かなり年数を経ていることがわかります。しかし工芸技術の高さは今も見てとれ、表面には金泥・銀泥を施した精緻な山水図が、背面には「施南翠濤山図」が、側面には「湖北巡撫臣周琬恭進」が型押しされています。「施南翠濤山」とは、湖北省(こほくしょう)施南府(せなんふ)の翠濤山(すいとうざん)のことで、表面の山水図はこの山の情景であることがわかります。ただ残念ながら、翠濤山が現在のどの山かは不明です。
次に「湖北巡撫臣周琬恭進」ですが、これは「湖北省の巡撫(じゅんぶ)(=地方行政長官)である周琬(しゅうえん)が謹んで献上します」という意味で、皇帝への献上品に使われる常とう句です。周琬は河南省出身の官僚で、記録によると、彼が湖北巡撫であったのは、清(しん)朝乾隆24 年(1759)から同26 年(1761)であり、この墨が献上されたのはこの時期であることがわかります。
皇帝への献上墨は「貢墨(こうぼく)」と呼ばれ、御用品として当然ながら高品質なものが選ばれました。そして臣下たちは、皇帝のご機嫌をうかがうため、こぞって貢墨を献上しました。周琬もまた、宮仕えの心がけとして、この墨を献上したのでしょう。(教師月報2018年5月号)

                                           
作品名清貢墨
ふりがなしんこうぼく
作者不詳
国名中国
制作年不詳
寸法9.8×2.3×1.2cm
目録番号97-0040

古玩文具の魅力②清貢墨
―観峰館の収蔵品をご紹介します―
今回は中国の古い墨「清貢墨(しんこうぼく)」をご紹介します。墨は比較的保存がきくため、長く保管されたものは古墨として評価されます。
紹介の墨は、全体にひび割れが入っていることから、かなり年数を経ていることがわかります。しかし工芸技術の高さは今も見てとれ、表面には金泥・銀泥を施した精緻な山水図が、背面には「施南翠濤山図」が、側面には「湖北巡撫臣周琬恭進」が型押しされています。「施南翠濤山」とは、湖北省(こほくしょう)施南府(せなんふ)の翠濤山(すいとうざん)のことで、表面の山水図はこの山の情景であることがわかります。ただ残念ながら、翠濤山が現在のどの山かは不明です。
次に「湖北巡撫臣周琬恭進」ですが、これは「湖北省の巡撫(じゅんぶ)(=地方行政長官)である周琬(しゅうえん)が謹んで献上します」という意味で、皇帝への献上品に使われる常とう句です。周琬は河南省出身の官僚で、記録によると、彼が湖北巡撫であったのは、清(しん)朝乾隆24 年(1759)から同26 年(1761)であり、この墨が献上されたのはこの時期であることがわかります。
皇帝への献上墨は「貢墨(こうぼく)」と呼ばれ、御用品として当然ながら高品質なものが選ばれました。そして臣下たちは、皇帝のご機嫌をうかがうため、こぞって貢墨を献上しました。周琬もまた、宮仕えの心がけとして、この墨を献上したのでしょう。(教師月報2018年5月号)

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