観峰館を運営する公益財団法人日本習字教育財団は、2023年10月で70周年を迎えます。
これを記念して、観峰館ホームページでは、財団創立者である原田観峰(1911~1995)の作品や、観峰館の収蔵品「観峰コレクション」蒐集の経緯などを紹介します。
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第1回 《扁額「読書楽」》
原田観峰は、習字手本の筆者として著名ですが、書家としても魅力的な作品を多く遺しています。第1回目は、扁額の作品をご紹介します。
今回取り上げる《扁額「読書楽」》は、昭和35年(1960)頃に書かれたと思われる作品です。原田観峰49歳ころの作品となります。
《扁額「読書楽」》は運筆の軽快さとあわせて、多折法や渇筆をもちいて文字そのものが楽しげな作品にしあがっています。
観峰館では当ページにおきまして、これからも原田観峰の作品を紹介して参ります。どうぞ楽しみにお待ちくださいませ。
第2回《仙客来遊隷書軸》
第2回目は、漢詩を書いた作品をご紹介します。
この作品の出典は、江戸時代初期の漢詩人で書家でもあった、石川丈山(1583~1672)の漢詩です。
仙客来たり遊ぶ雲外の巓[いただき]、
神龍棲み老ゆ洞中[どうちゆう]の淵。
雪は紈素[がんそ]の如く煙は柄[え]の如し、
白扇倒[さかし]まに懸[か]く東海の天。
雲の外にある巓(いただき]は仙人の来たり遊ぶ処、
洞穴の奥の深い淵は年を経た龍の棲み処。
降り積もった雪は紈素(しらぎぬ)、立ち上る煙は柄のよう、
東の海の空に白扇を逆さに懸けたたようである。
波磔のない隷書風の書体で、滲みを活かして線に太細の変化をつけています。画数の多い文字の中にできる余白も、滲みが重なって余白が消えてしまわないように、意識が行き渡っています。
観峰は相当な早書きの人ですが、筆に含ませる墨の量や、線を引くスピード(紙が墨を吸う量)などを、瞬時に感じて調整していたように思います。
これは、字間もゆったりと取って、滲みが多いのに文字がつぶれていない。文字の懐が大きく取れている。文字の明瞭さや作品の明るさを作る大切な要素です。
▼YouTubeでも原田観峰の作品をご紹介しています(過去に実施した観峰館オンライン講座の様子です)