堆漆筆管

ついしつひっかん
     

筆は、硯・墨・紙とともに「文房四宝」を構成する重要な文房具ですが、紙と同じく、消耗品として扱われることが多いと思われます。また、実用面のみを追求するならば、書きやすければよいのであって、軸の部分である筆管は本来、穂をきちんと固定し、握りやすければ、木製でも竹製でも構わないでしょう。しかし、他の文房具同様に、筆にも美術工芸品としての認識がもたれるようになり、明代ごろから素材をはじめ筆管に意匠がこらされ、鑑賞に供されるものが流行し始めます。そのような工芸的筆管には、金・銀・玉・象牙・角・陶器などさまざまな素材が使われ、表面には螺鈿(らでん)細工や彫刻などが施されたものもありました。
今回ご紹介する筆管は、堆漆という技法を用いたものです。堆漆とは、彫漆(ちょうしつ)とも呼ばれ木製の下地に漆を何層にも厚く塗り重ねて文様を彫り込む技法で、筆管のほかにも家具や小物に施されます。本品は、赤い漆を用いた堆朱(ついしゅ)のものと、黒い漆の層の堆黒(ついこく)に堆朱を重ねたもので、いずれも筆帽(ひつぼう)と呼ばれるキャップが付属しています。また、筆帽を含めて長さ30cmばかりの筆の表面には、雲と龍が絡み合う文様[雲龍紋]が精緻に彫刻されています。現在、穂は失われていますが、新しい穂に付け替えることで、筆管は繰り返し使用することが出来ます。このような筆はもはや消耗品ではなく芸術品として、高貴な人物のために製作されたのでしょう。
(教師月報 2019年5月号)

                                           
作品名堆漆筆管
ふりがなついしつひっかん
作者不詳
国名中国
制作年不詳
寸法28.7×2.2cm
目録番号CT-0129

筆は、硯・墨・紙とともに「文房四宝」を構成する重要な文房具ですが、紙と同じく、消耗品として扱われることが多いと思われます。また、実用面のみを追求するならば、書きやすければよいのであって、軸の部分である筆管は本来、穂をきちんと固定し、握りやすければ、木製でも竹製でも構わないでしょう。しかし、他の文房具同様に、筆にも美術工芸品としての認識がもたれるようになり、明代ごろから素材をはじめ筆管に意匠がこらされ、鑑賞に供されるものが流行し始めます。そのような工芸的筆管には、金・銀・玉・象牙・角・陶器などさまざまな素材が使われ、表面には螺鈿(らでん)細工や彫刻などが施されたものもありました。
今回ご紹介する筆管は、堆漆という技法を用いたものです。堆漆とは、彫漆(ちょうしつ)とも呼ばれ木製の下地に漆を何層にも厚く塗り重ねて文様を彫り込む技法で、筆管のほかにも家具や小物に施されます。本品は、赤い漆を用いた堆朱(ついしゅ)のものと、黒い漆の層の堆黒(ついこく)に堆朱を重ねたもので、いずれも筆帽(ひつぼう)と呼ばれるキャップが付属しています。また、筆帽を含めて長さ30cmばかりの筆の表面には、雲と龍が絡み合う文様[雲龍紋]が精緻に彫刻されています。現在、穂は失われていますが、新しい穂に付け替えることで、筆管は繰り返し使用することが出来ます。このような筆はもはや消耗品ではなく芸術品として、高貴な人物のために製作されたのでしょう。
(教師月報 2019年5月号)

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