観峰館の収蔵品より、今回はもう一つの墨盒をご紹介します。
平成31 年 1 月号でも墨盒をご紹介しましたが、墨盒とは、墨汁を入れておく容器のことです。今回は、その意匠に注目したいと思います。墨盒は一般的に、真鍮などでできており、表面には文字や模様などが施されます。
今回ご紹介する墨盒の蓋にも、古い文字がデザインされています。読んでいくと、右上から篆書で印章風に「明月照積雪(めいげつせきせつをてらす)」「己所不欲勿施于人(おのれのほっせざるところをひとにほどこすなかれ)」「国士無双 (こくしむそう) 」「率真( そつしん )」「一片冰心在玉壺(いっぺんのひょうしんぎょっこにあり) 」とあります。そして最後に「茫父(ぼうふ )」というサインと「姚」の印も見えます。これにより、これを彫ったのは姚華(ようか 1876~1930)であることがわかります。姚華は非常に多才な人物で、詩・書・画をはじめ篆刻・小説・古文字学など、さまざまな分野で活躍しました。そして彼の才能のなかには彫金も含まれており、墨盒や鎮紙 文鎮 など金属製の文房具に、主に篆書で文言を巧みに彫りつけることができました。本品は、その姚華が手掛けた貴重なものです。さらに本品を詳しく見てゆくと、蓋の側面に「財政年鑑創刊記念」「財政年鑑編纂所謹贈」と見え、これが記念品として造られ、プレゼントされたものであることがわかります。また底面には、「清秘」「工」と いう刻印があることから、これが北京・瑠璃廠(るりしょう)にある書画文房具の老舗である「清秘閣」が製造したものであることも判明します。姚華が活躍した時代や『財政年鑑』という近代的な出版物の名称から、この墨盒が造られたのは民国時代であると考えられますが、近代になっても墨盒に一定の需要があったことが窺える興味深い資料です。(教師月報 2020年3月号)
墨盒(CD-0048)側面
墨盒(CD-0048)底面
作品名 | 墨盒 |
ふりがな | ぼくごう |
作者 | 姚華 |
国名 | 中国 |
制作年 | 中華民国 |
寸法 | 3.4×11.5×8.3cm |
目録番号 | CD-0048 |
観峰館の収蔵品より、今回はもう一つの墨盒をご紹介します。
平成31 年 1 月号でも墨盒をご紹介しましたが、墨盒とは、墨汁を入れておく容器のことです。今回は、その意匠に注目したいと思います。墨盒は一般的に、真鍮などでできており、表面には文字や模様などが施されます。
今回ご紹介する墨盒の蓋にも、古い文字がデザインされています。読んでいくと、右上から篆書で印章風に「明月照積雪(めいげつせきせつをてらす)」「己所不欲勿施于人(おのれのほっせざるところをひとにほどこすなかれ)」「国士無双 (こくしむそう) 」「率真( そつしん )」「一片冰心在玉壺(いっぺんのひょうしんぎょっこにあり) 」とあります。そして最後に「茫父(ぼうふ )」というサインと「姚」の印も見えます。これにより、これを彫ったのは姚華(ようか 1876~1930)であることがわかります。姚華は非常に多才な人物で、詩・書・画をはじめ篆刻・小説・古文字学など、さまざまな分野で活躍しました。そして彼の才能のなかには彫金も含まれており、墨盒や鎮紙 文鎮 など金属製の文房具に、主に篆書で文言を巧みに彫りつけることができました。本品は、その姚華が手掛けた貴重なものです。さらに本品を詳しく見てゆくと、蓋の側面に「財政年鑑創刊記念」「財政年鑑編纂所謹贈」と見え、これが記念品として造られ、プレゼントされたものであることがわかります。また底面には、「清秘」「工」と いう刻印があることから、これが北京・瑠璃廠(るりしょう)にある書画文房具の老舗である「清秘閣」が製造したものであることも判明します。姚華が活躍した時代や『財政年鑑』という近代的な出版物の名称から、この墨盒が造られたのは民国時代であると考えられますが、近代になっても墨盒に一定の需要があったことが窺える興味深い資料です。(教師月報 2020年3月号)
墨盒(CD-0048)側面
墨盒(CD-0048)底面