封泥「内官丞印」

ふうでい「ないかんじょういん」
     

封泥(ふうでい)とは、古代中国で文書や容器を「封」緘(かん)するのに用いた「泥」、つまり粘土である。

紙が普及する以前、文書は多く木や竹の札(木簡・竹簡)に書かれていたが、文字の書かれた表面を削り取ることで内容の書き換えが可能であった。そこで書き終えた札を巻き簾(す)のように綴(と)じて巻き、紐で縛った上に粘土を置いて印を捺すことで、密かに開封することができないようにした。

しかし、書写材料としての紙の普及により、やがて封泥の存在は忘れ去られ、再び注目されるようになったのは20世紀になってからである。封泥に捺された印文には、官職名や地名などが刻まれているため、当時の官制や地理、さらに古文字学や行政実務などに関するさまざまな情報が詰まっており、現在でも研究が続けられている。

観峰館には、秦時代の封泥が153点収蔵されている。これらの封泥は、1995年に西安市の北郊外に位置する相家巷(しょうかこう)という場所で偶然発見されたもので、1997年に当館の所蔵となった。

相家巷封泥は研究の結果、今から約2,200年前の秦代のものと断定されており、大変貴重な古代の文字資料といえる。また、収蔵数も日本最大級のものである。

相家巷封泥の特徴としては、印文が秦で用いられた小篆で刻まれていること、その内容のほとんどが官職名や地名であること、文字が「田」字あるいは「日」字型の枠線で囲まれていることが挙げられる。また、裏面や側面には、封泥が触れていた物体の痕跡が残っており、印面のまわりに当時の人の指紋が残っているものもある。

本作は他にも出土例がある。『漢書』百官公卿表は、宗正の属官に内官長・丞があったが、当初は少府の属官であったとする。顔師古は『漢書』律暦志の度の項に拠り、内官は「主分寸尺丈」と注する。

 

【参考文献】

瀨川敬也「観峰館所蔵封泥」(『観峰館紀要』第5号、公益財団法人日本習字教育財団観峰館、2009年)

観峰館紀要 第5号

瀨川敬也「観峰館所蔵封泥(二)」(『観峰館紀要』第6号、公益財団法人日本習字教育財団観峰館、2010年)

観峰館紀要 第6号

瀨川敬也「観峰館所蔵封泥(三)」(『観峰館紀要』第7号、公益財団法人日本習字教育財団観峰館、2011年)

観峰館紀要 第7号

                                               
作品名封泥「内官丞印」
ふりがなふうでい「ないかんじょういん」
作者不詳
国名中国
制作年秦 統一前後
寸法3.1×2.75×0.65cm
目録番号97-0050-2
釈文内官丞印

封泥(ふうでい)とは、古代中国で文書や容器を「封」緘(かん)するのに用いた「泥」、つまり粘土である。

紙が普及する以前、文書は多く木や竹の札(木簡・竹簡)に書かれていたが、文字の書かれた表面を削り取ることで内容の書き換えが可能であった。そこで書き終えた札を巻き簾(す)のように綴(と)じて巻き、紐で縛った上に粘土を置いて印を捺すことで、密かに開封することができないようにした。

しかし、書写材料としての紙の普及により、やがて封泥の存在は忘れ去られ、再び注目されるようになったのは20世紀になってからである。封泥に捺された印文には、官職名や地名などが刻まれているため、当時の官制や地理、さらに古文字学や行政実務などに関するさまざまな情報が詰まっており、現在でも研究が続けられている。

観峰館には、秦時代の封泥が153点収蔵されている。これらの封泥は、1995年に西安市の北郊外に位置する相家巷(しょうかこう)という場所で偶然発見されたもので、1997年に当館の所蔵となった。

相家巷封泥は研究の結果、今から約2,200年前の秦代のものと断定されており、大変貴重な古代の文字資料といえる。また、収蔵数も日本最大級のものである。

相家巷封泥の特徴としては、印文が秦で用いられた小篆で刻まれていること、その内容のほとんどが官職名や地名であること、文字が「田」字あるいは「日」字型の枠線で囲まれていることが挙げられる。また、裏面や側面には、封泥が触れていた物体の痕跡が残っており、印面のまわりに当時の人の指紋が残っているものもある。

本作は他にも出土例がある。『漢書』百官公卿表は、宗正の属官に内官長・丞があったが、当初は少府の属官であったとする。顔師古は『漢書』律暦志の度の項に拠り、内官は「主分寸尺丈」と注する。

 

【参考文献】

瀨川敬也「観峰館所蔵封泥」(『観峰館紀要』第5号、公益財団法人日本習字教育財団観峰館、2009年)

観峰館紀要 第5号

瀨川敬也「観峰館所蔵封泥(二)」(『観峰館紀要』第6号、公益財団法人日本習字教育財団観峰館、2010年)

観峰館紀要 第6号

瀨川敬也「観峰館所蔵封泥(三)」(『観峰館紀要』第7号、公益財団法人日本習字教育財団観峰館、2011年)

観峰館紀要 第7号

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