春秋時代、曽参(そうしん)という人がいました。彼は非常に親孝行で、いつも両親の好みに合わせて食事を作っていました。曽参の父親が亡くなると、曽参は羊棗(やんつぁう、柿の一種)を二度と口にしなくなりました。曽参の父親が大好物だったからです。
曽参が少年の頃、彼は家が貧しいので毎日山へ薪木を拾いに出かけました。ある日、曽参が留守にしていると、彼を訪ねてやってくる者がいました。突然の来客に、母親は慌てました。家では客をもてなせるような準備をしていなかったからです。
曽参に早く戻って欲しい一心で、母親は自分の指を血が出るほど噛み、祈りました。すると、曽参は急に心が痛みだし、誰かに呼ばれているような気がしました。彼はさっと薪木を束ねると、足早に山を降りて家へ急ぎました。
曽参が家に着くと、母親はほっと安堵しました。経緯がわかった曽参はすぐに来客に応対し、礼を尽くしました。まさに親子の絆の強さを物語る逸話です。
親を敬い孝行する曽参は、のちに孔子に弟子入りし、儒教に関する重要な書物の一つ「孝経」を著しました。
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