楷書臨九成宮醴泉銘軸

かいしょりんきゅうせいきゅうれいせんめいじく
     

本作は、初唐の三大家に数えられる書家・欧陽詢(557~641)の《九成宮醴泉銘》を臨書したものです。

《九成宮醴泉銘》は、唐の太宗(598〜649)が貞観6年(632)暑さを避けて九成宮を訪れたとき、宮殿の傍らに「醴泉」つまり甘味のある水の泉がわき出たことを記念して建てられた石碑です。文を魏徴(580~643)が作り、それを欧陽詢が書いたものを刻しています。《九成宮醴泉銘》は、欧陽詢の書作品を代表するものでもあります。

本作は、緊張感のある直線が魅力的な臨書作品です。手本とした《九成宮醴泉銘》の線質をよく捉えていると言えるでしょう。各文字の墨量もほとんど一定で、どの文字を見ても均質な線が用いられています。その様子は、肉筆でありながら、まるで石碑に刻された文字の姿のようです。

作者の伊立勲は字を峻斎といい、福建寧化の人です。清時代末期に江蘇省・無錫の知県(知事)になった人物です。中華民国以後は上海で書家として活躍しました。清時代中期の書家・伊秉綬(1754~1815)の後裔です。

 

【参考文献】

根來孝明「伊立勲の書における言葉と形―孫過庭《書譜》の臨書作品を中心に―」『観峰館紀要』第17号、公益財団法人日本習字教育財団観峰館、2023年

観峰館紀要 第17号

                                               
作品名楷書臨九成宮醴泉銘軸
ふりがなかいしょりんきゅうせいきゅうれいせんめいじく
作者伊立勲
国名中国
制作年民国7年(1918)
寸法148.2×39.3cm
目録番号5A-6004
釈文上天之載無臭無声万類資始 品物流形随感変質応徳効霊 介焉如響 戌午夏五臨欧陽率更醴泉銘 蕊初仁兄先生雅属 峻斎伊立勲

本作は、初唐の三大家に数えられる書家・欧陽詢(557~641)の《九成宮醴泉銘》を臨書したものです。

《九成宮醴泉銘》は、唐の太宗(598〜649)が貞観6年(632)暑さを避けて九成宮を訪れたとき、宮殿の傍らに「醴泉」つまり甘味のある水の泉がわき出たことを記念して建てられた石碑です。文を魏徴(580~643)が作り、それを欧陽詢が書いたものを刻しています。《九成宮醴泉銘》は、欧陽詢の書作品を代表するものでもあります。

本作は、緊張感のある直線が魅力的な臨書作品です。手本とした《九成宮醴泉銘》の線質をよく捉えていると言えるでしょう。各文字の墨量もほとんど一定で、どの文字を見ても均質な線が用いられています。その様子は、肉筆でありながら、まるで石碑に刻された文字の姿のようです。

作者の伊立勲は字を峻斎といい、福建寧化の人です。清時代末期に江蘇省・無錫の知県(知事)になった人物です。中華民国以後は上海で書家として活躍しました。清時代中期の書家・伊秉綬(1754~1815)の後裔です。

 

【参考文献】

根來孝明「伊立勲の書における言葉と形―孫過庭《書譜》の臨書作品を中心に―」『観峰館紀要』第17号、公益財団法人日本習字教育財団観峰館、2023年

観峰館紀要 第17号

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