水牛角管筆

すいぎゅうかくかんひつ
     

古玩文具の魅力③
―観峰館の収蔵品をご紹介します―
皆さんが日常使う筆は、軸が竹でできているものがほとんどです。中には木製や漆などで彩色したものもありますが、それらも「直管」という軸がまっすぐなものが大半です。
水牛角管筆(すいぎゅうかくかんひつ)は、軸がバナナのように湾曲している、水牛の角の先端部分を軸として利用した筆です。手に取ってみると、なめらかな感触と、どっしりと適度な重みがあります。湾曲した部分は親指と人差し指のあいだに馴染(なじ)んで意外と書きやすそうです。穂は何種類かの毛を混ぜた兼毫(けんごう)で、直径3㎝長さは11 ㎝ありますので、中字から大字を書くのに適しています。
さて、水牛の角の先端部は詰まっていますが、太い部分は中空です。薄い側面は装身具などに加工され、今でもボタンや簪(かんざし)、包丁の柄や刀装具にも利用されています。先端部分は印鑑の材料として象牙と並んで身近な素材です。
象牙は歯の一部で硬く耐久性に優れていますが、牛角は比較的柔らかくて加工がしやすく、手入れをすると、黒い光沢が出て高級感があります。水牛は東アジアや東南アジア、インドの河川や湖沼地帯に広く生息しており、雑草などの粗末な食べ物で大きく成長し、乳や肉を得られたり、水田耕作などの役に立つので、中国では数千年前から家畜として飼われてきました。また、農耕に重要な役割があることから、五穀豊穣のシンボルとなり、ゆっくりと力強い動きをすることから尊厳や信頼の象徴とも理解されています。水とも相性がよいので、墨を含んで紙の上で自在に文字を書ける筆に利用されたのかもしれません。

この筆は、文雅の表現として軸の側面に、唐(とう)代の詩人王之渙(おうしかん)の「登鸛鵲楼(かんじゃくろうに登る)」と張継(ちょうけい)「楓橋夜泊(ふうきょうやはく)」の漢詩二首が線刻されています。
(教師月報 2018年6月号)

                                           
作品名水牛角管筆
ふりがなすいぎゅうかくかんひつ
作者不詳
国名中国
制作年不詳
寸法径3cm、長さ11cm
目録番号CT-0107

古玩文具の魅力③
―観峰館の収蔵品をご紹介します―
皆さんが日常使う筆は、軸が竹でできているものがほとんどです。中には木製や漆などで彩色したものもありますが、それらも「直管」という軸がまっすぐなものが大半です。
水牛角管筆(すいぎゅうかくかんひつ)は、軸がバナナのように湾曲している、水牛の角の先端部分を軸として利用した筆です。手に取ってみると、なめらかな感触と、どっしりと適度な重みがあります。湾曲した部分は親指と人差し指のあいだに馴染(なじ)んで意外と書きやすそうです。穂は何種類かの毛を混ぜた兼毫(けんごう)で、直径3㎝長さは11 ㎝ありますので、中字から大字を書くのに適しています。
さて、水牛の角の先端部は詰まっていますが、太い部分は中空です。薄い側面は装身具などに加工され、今でもボタンや簪(かんざし)、包丁の柄や刀装具にも利用されています。先端部分は印鑑の材料として象牙と並んで身近な素材です。
象牙は歯の一部で硬く耐久性に優れていますが、牛角は比較的柔らかくて加工がしやすく、手入れをすると、黒い光沢が出て高級感があります。水牛は東アジアや東南アジア、インドの河川や湖沼地帯に広く生息しており、雑草などの粗末な食べ物で大きく成長し、乳や肉を得られたり、水田耕作などの役に立つので、中国では数千年前から家畜として飼われてきました。また、農耕に重要な役割があることから、五穀豊穣のシンボルとなり、ゆっくりと力強い動きをすることから尊厳や信頼の象徴とも理解されています。水とも相性がよいので、墨を含んで紙の上で自在に文字を書ける筆に利用されたのかもしれません。

この筆は、文雅の表現として軸の側面に、唐(とう)代の詩人王之渙(おうしかん)の「登鸛鵲楼(かんじゃくろうに登る)」と張継(ちょうけい)「楓橋夜泊(ふうきょうやはく)」の漢詩二首が線刻されています。
(教師月報 2018年6月号)

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