真鍮製文鎮

しんちゅうせいぶんちん
     

古玩文具の魅力⑧
文鎮は紙をおさえる道具です。紙鎮や鎮紙とも言われます。
揮毫(きごう)の時に紙をおさえるものは文鎮、読書の時にページや巻子(かんす)をおさえるものは書鎮と呼ばれます。ただし、書鎮は下部が滑らかで、ある程度の重さがあれば、お皿や石、墨や硯など他の物でも代用や転用ができるので、文鎮のように専用に作られて、伝わったものは少ないようです。
文鎮は、揮毫の時に紙が動かないようにするためのものですが、巻子や書簡など日常の文書や手紙を書く場合は、それほど必要にはなりません。明時代以降、書そのものが作品として鑑賞の対象としてつくられるようになると、全紙や半切、長条幅など大きな紙や帛(はく)が、筆の動きに合わせて引っ張られないように、しっかりと紙をおさえる役割を果たして、多く用いられるようになりました。
そして、その用途に加えて、他の文房具同様に、学問教養を匂わせる上品な工芸装飾を施す対象になっていきました。
今回紹介する文鎮は、中華民国の初期に書や絵画をもって活躍した、姚華(ようか)(1876~1930)の篆書、印稿とその釈文が彫られている真鍮製の文鎮です。上から「誠為立身之本」(誠は身を立てる本である)、「行権有道」(権を行うに道あり)、「家書抵萬金」(家族からの手紙は萬金に抵(あた)る:杜甫『春望』)、「志在聖賢」(志は聖賢に在り)と彫られているのがわかります。
姚華は、字を重光。范父と号しました。貴州省の人で、文字、訓詁(くんこ)(古典の文字や語句を解釈する分野)の学に精しく金石の考証に明るく、敦煌千仏洞壁画と唐代の磚刻を模写して板刻し評判となります。絵画は山水、花卉、人物を善くし、古仏、美人画にも巧みでした。陳衡恪、王雲、梅蘭芳、梁啓超など、当時、華々しく活躍した芸術家たちとも親しく交流し、書は各体にすぐれました。北京で造られる銅製の墨盒(墨をいれておく蓋つきの入れ物)、印盒(印の入れ物)、圧尺(文鎮)の表面の線刻図のすぐれたものの多くは、陳衡恪と姚華との合作であったと伝わっています。(教師月報 2018年11月号)

                                           
作品名真鍮製文鎮
ふりがなしんちゅうせいぶんちん
作者姚華
国名中国
制作年中華民国
寸法21.8×3.6×0.5cm
目録番号CD-0084

古玩文具の魅力⑧
文鎮は紙をおさえる道具です。紙鎮や鎮紙とも言われます。
揮毫(きごう)の時に紙をおさえるものは文鎮、読書の時にページや巻子(かんす)をおさえるものは書鎮と呼ばれます。ただし、書鎮は下部が滑らかで、ある程度の重さがあれば、お皿や石、墨や硯など他の物でも代用や転用ができるので、文鎮のように専用に作られて、伝わったものは少ないようです。
文鎮は、揮毫の時に紙が動かないようにするためのものですが、巻子や書簡など日常の文書や手紙を書く場合は、それほど必要にはなりません。明時代以降、書そのものが作品として鑑賞の対象としてつくられるようになると、全紙や半切、長条幅など大きな紙や帛(はく)が、筆の動きに合わせて引っ張られないように、しっかりと紙をおさえる役割を果たして、多く用いられるようになりました。
そして、その用途に加えて、他の文房具同様に、学問教養を匂わせる上品な工芸装飾を施す対象になっていきました。
今回紹介する文鎮は、中華民国の初期に書や絵画をもって活躍した、姚華(ようか)(1876~1930)の篆書、印稿とその釈文が彫られている真鍮製の文鎮です。上から「誠為立身之本」(誠は身を立てる本である)、「行権有道」(権を行うに道あり)、「家書抵萬金」(家族からの手紙は萬金に抵(あた)る:杜甫『春望』)、「志在聖賢」(志は聖賢に在り)と彫られているのがわかります。
姚華は、字を重光。范父と号しました。貴州省の人で、文字、訓詁(くんこ)(古典の文字や語句を解釈する分野)の学に精しく金石の考証に明るく、敦煌千仏洞壁画と唐代の磚刻を模写して板刻し評判となります。絵画は山水、花卉、人物を善くし、古仏、美人画にも巧みでした。陳衡恪、王雲、梅蘭芳、梁啓超など、当時、華々しく活躍した芸術家たちとも親しく交流し、書は各体にすぐれました。北京で造られる銅製の墨盒(墨をいれておく蓋つきの入れ物)、印盒(印の入れ物)、圧尺(文鎮)の表面の線刻図のすぐれたものの多くは、陳衡恪と姚華との合作であったと伝わっています。(教師月報 2018年11月号)

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