緑端蘭亭硯

りょくたんらんていけん
     

古玩文具の魅力①
―観峰館の収蔵品をご紹介します―
端渓石(たんけいせき)は、中国・広東省肇慶(ちょうけい)市高要区に流れる西江の支流に臨む、斧柯山(ふかざん)を中心とする辺り一帯より産出する硯石を指します。「硯といえば端渓」という程、端渓の名前は良硯の代名詞として使われます。その石質は、鋒鋩(ほうぼう、硯の表面にある墨を磨るための粒子のこと)が強く長持ちし、硬度が適度で磨墨(まぼく)の状態がよいことにあります。
模様となる「蘭亭」とは、書聖・王羲之(おうぎし)の「蘭亭序」に因むもので、硯縁(けんえん)上部には蘭亭内の王羲之を、墨池には二羽の鵞鳥(がちょう)を、それぞれ刻しています。ちょうど墨池に水を注ぐと、水辺に浮かぶ蘭亭と、鵞鳥が池を泳ぐ様子に見えるよう演出されています。硯縁と硯側(けんそく)には、盃が流れる水辺に数十名の文士が漢詩を読む様子が見え、裏面には「蘭亭序」本文が刻まれています。
王羲之とその書への憧憬(あこがれ)は、「蘭亭序」の絵画化へと繋がっていき、中国・明(みん)時代末頃より盛んになりました。絵画と同様に、蘭亭硯も、清(しん)時代より現代に至るまで多く制作されました。日本には、最古の硯譜『和漢硯譜(わかんけんぷ)』(寛政7年・1795序)等に蘭亭硯が確認出来ませんので、明治時代以後に日本に舶載(はくさい)されたと考えてよいでしょう。
書を上手に書きたいと考えるのは、現在も昔も同じです。人びとは「蘭亭硯」にその思いを託したのかもしれません。(教師月報2018年4月号)

                                           
作品名緑端蘭亭硯
ふりがなりょくたんらんていけん
作者不詳
国名中国
制作年不詳
寸法21.5×12.7×6.5cm
目録番号Y-029

古玩文具の魅力①
―観峰館の収蔵品をご紹介します―
端渓石(たんけいせき)は、中国・広東省肇慶(ちょうけい)市高要区に流れる西江の支流に臨む、斧柯山(ふかざん)を中心とする辺り一帯より産出する硯石を指します。「硯といえば端渓」という程、端渓の名前は良硯の代名詞として使われます。その石質は、鋒鋩(ほうぼう、硯の表面にある墨を磨るための粒子のこと)が強く長持ちし、硬度が適度で磨墨(まぼく)の状態がよいことにあります。
模様となる「蘭亭」とは、書聖・王羲之(おうぎし)の「蘭亭序」に因むもので、硯縁(けんえん)上部には蘭亭内の王羲之を、墨池には二羽の鵞鳥(がちょう)を、それぞれ刻しています。ちょうど墨池に水を注ぐと、水辺に浮かぶ蘭亭と、鵞鳥が池を泳ぐ様子に見えるよう演出されています。硯縁と硯側(けんそく)には、盃が流れる水辺に数十名の文士が漢詩を読む様子が見え、裏面には「蘭亭序」本文が刻まれています。
王羲之とその書への憧憬(あこがれ)は、「蘭亭序」の絵画化へと繋がっていき、中国・明(みん)時代末頃より盛んになりました。絵画と同様に、蘭亭硯も、清(しん)時代より現代に至るまで多く制作されました。日本には、最古の硯譜『和漢硯譜(わかんけんぷ)』(寛政7年・1795序)等に蘭亭硯が確認出来ませんので、明治時代以後に日本に舶載(はくさい)されたと考えてよいでしょう。
書を上手に書きたいと考えるのは、現在も昔も同じです。人びとは「蘭亭硯」にその思いを託したのかもしれません。(教師月報2018年4月号)

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