本作は唐時代の孫過庭(648?~703?)によって書かれた書論《書譜》を臨書したものです。
《書譜》は、書を論じた内容とともに、草書学習における手本として、古くから用いられてきた作品です。原本は現在、国立故宮博物院(台北)に収蔵されています。
伊立勲(1856~1942?)による臨書作品を見ると、草書体ですが、文字を続けて書くことはなく、それぞれ同程度の大きさで独立しています。字形についても、手本よりも安定感のあるものに改変されています。
また、各文字の墨量もほとんど一定のため、紙面には楷書体が並んでいるかのような整然さがあります。これは書体を越えて、伊立勲の他作品とも共通する特質でもあります。
作者の伊立勲は字を峻斎といい、福建寧化の人です。清時代末期に江蘇省・無錫の知県(知事)になった人物です。中華民国以後は上海で書家として活躍しました。清時代中期の書家・伊秉綬(1754~1815)の後裔です。
【参考文献】
根來孝明「伊立勲の書における言葉と形―孫過庭《書譜》の臨書作品を中心に―」『観峰館紀要』第17号、公益財団法人日本習字教育財団観峰館、2023年
観峰館紀要 第17号
作品名 | 草書臨孫過庭書譜軸 |
ふりがな | そうしょりんそんかていしょふじく |
作者 | 伊立勲 |
国名 | 中国 |
制作年 | 民国7年(1918) |
寸法 | 146.0×36.7cm |
目録番号 | 4A-4288 |
釈文 | 譬夫絳樹青琴殊姿共豔随珠和壁 異質同妍何必刻鶴図龍竟慚真体得 魚獲兔猶恡筌蹄 蕊初仁兄大雅属臨書譜 戊午夏仲伊立勲時客申江 |
本作は唐時代の孫過庭(648?~703?)によって書かれた書論《書譜》を臨書したものです。
《書譜》は、書を論じた内容とともに、草書学習における手本として、古くから用いられてきた作品です。原本は現在、国立故宮博物院(台北)に収蔵されています。
伊立勲(1856~1942?)による臨書作品を見ると、草書体ですが、文字を続けて書くことはなく、それぞれ同程度の大きさで独立しています。字形についても、手本よりも安定感のあるものに改変されています。
また、各文字の墨量もほとんど一定のため、紙面には楷書体が並んでいるかのような整然さがあります。これは書体を越えて、伊立勲の他作品とも共通する特質でもあります。
作者の伊立勲は字を峻斎といい、福建寧化の人です。清時代末期に江蘇省・無錫の知県(知事)になった人物です。中華民国以後は上海で書家として活躍しました。清時代中期の書家・伊秉綬(1754~1815)の後裔です。
【参考文献】
根來孝明「伊立勲の書における言葉と形―孫過庭《書譜》の臨書作品を中心に―」『観峰館紀要』第17号、公益財団法人日本習字教育財団観峰館、2023年
観峰館紀要 第17号